


採用難易度が高まる現代において、多くの企業が注目しているのが「スクラム採用」というチーム参加型の新しいアプローチです。従来は人事部門が主体で行ってきた採用活動を、事業サイドを含むチーム全員で推進することで、入社後の活躍確度が高まり、採用プロセス自体のスピードと質が同時に向上します。本記事では、スクラム採用の概要から実践方法、そして導入のメリットまでを体系的に解説します。
スクラム採用とは、採用プロセスにプロジェクトメンバーや関連部門を巻き込み、チーム全体で候補者とのコミュニケーションや選考を進める採用手法を指します。ソフトウェア開発における「スクラム」の概念を応用しており、協働しながら採用の質とスピードを最大化することを目的としています。
従来型の採用は、人事部主導で候補者と向き合うのが一般的でした。しかし、このやり方では、現場のリアルな期待値や文化を正確に伝えきることが難しく、入社後のミスマッチにつながるという課題があったのです。
スクラム採用では、現場メンバーが選考や面談に積極的に参加します。これにより、候補者は多面的に会社を理解でき、入社後の業務イメージを具体的に描きやすくなります。また、企業側も候補者の強み・価値観・カルチャーフィットをより正確に判断できるようになり、採用の精度が格段に高まります。さらに、現場が採用に巻き込まれることで、採用の意義がチーム全体で共有され、「この人を迎え入れたい」という熱量が上がりやすい点も特徴です。
このように、スクラム採用は単なる面接の多面化にとどまりません。組織を横断した協働プロセスによって、採用の成功確率を最大化するアプローチといえます。
とりわけ事業開発(BizDev)領域では、市場・顧客・プロダクト・アライアンスなど、多岐にわたるステークホルダーを巻き込みながら価値創出を行います。そのため、そのポジションを担うには、幅広いスキルと高いコミュニケーション能力、柔軟な思考が求められます。しかし、こうした複雑な能力は、書類選考や形式的な面接だけでは見抜きにくいという難しさがあります。
スクラム採用であれば、実際に協働するメンバーが選考に参加するので、候補者の強みや働き方への適性を、より自然な対話を通じて確認できます。たとえば、仮想プロジェクトを一緒に議論してみたり、職場の現場メンバーとカジュアルにディスカッションしたりすることも可能になります。その結果、候補者の思考プロセスやチームへのフィット感を立体的に把握できます。
加えて、優秀な候補者を確保するためにはスピードと魅力付けが不可欠です。スクラム採用では関係者が早期から情報共有を行うため、意思決定が高速化します。また、候補者にとっても現場との接点が増えることで、「このチームなら一緒に働きたい」という感情的価値を感じやすくなり、結果として入社意欲の向上につながっていくでしょう。
スクラム採用の実践には、いくつかの共通ステップがあります。
まず重要なのは「採用目的と求める人物像の共有」です。これを人事だけでなく、現場メンバー全員が理解しておくことで、選考基準のブレが生じにくくなります。
次に、候補者とのコミュニケーションの役割分担を明確にします。初回接点は人事が担い、業務理解が深まるタイミングでは現場メンバーが参加するといった運用が一般的です。
選考プロセスでは、複数のメンバーが異なる視点で評価することがポイントとなります。たとえば、論理思考はBizDevリーダーが見極め、プロジェクトマネジメント能力は別メンバーが評価するといった具合です。また、候補者とのカジュアル面談や職場ツアーを組み込み、リアルな業務環境を感じてもらう工夫も効果を発揮します。
選考後は、関係者全員で評価を持ち寄り、合否の判断基準を明確にします。このレビュー工程がスクラム採用の重要ポイントであり、複眼的な評価により採用の精度が飛躍的に高まるのです。さらに、候補者に出すフィードバックも一貫性が生まれるため、企業価値を高める効果も期待できます。
スクラム採用には、次のようなメリットがあります。
一方で注意点もあります。関係者が多くなることで、評価基準が曖昧だと判断がブレてしまいがちです。そのため、事前に求める人物像や行動評価基準を具体化しておくことが不可欠となります。また、現場の業務負荷が増える可能性もあるため、時間確保やプロセス設計を丁寧に行う必要があります。
スクラム採用を成功させるためには、まず「採用を組織戦略の一部として捉える姿勢」が欠かせません。どの企業においても人材は競争力の源泉です。採用を人事部だけに任せるのではなく、経営・現場を巻き込んだ全社的な取り組みとすることで、大きな成果が得られるでしょう。
次に重要なのは、候補者へのオープンな情報開示です。業務内容や組織課題を正直に伝えることで、入社後のギャップを最小限に抑えられ、本当にカルチャーにマッチする人材だけが残ります。これが結果的に離職率低下にもつながります。また、候補者との接点においては、一貫したメッセージと温かいコミュニケーションを心掛けることが、信頼醸成の鍵になります。
さらに、スクラム採用を形骸化させないためには、プロセスの振り返りが必須です。「どの工程が効果的だったのか」「どの評価基準が曖昧だったのか」を定期的にレビューし、改善を続けることで、採用活動の質が継続的に向上します。これはスタートアップから大企業まで、あらゆる組織に共通して効果をもたらす取り組みといえます。
スクラム採用は、人事と現場が連携し、採用活動を組織全体で推進する新しい採用モデルです。従来の採用では見えにくかった候補者の適性を多面的に評価でき、スピードと質を同時に高められる点が大きな特徴です。事業開発領域に限らず、あらゆる組織にとって有効な採用アプローチであり、導入することでミスマッチ防止やチーム力向上にもつながります。
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