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戦略的人材計画(SWP)とは?ワークフォースプランニングの意味と進め方、要員計画との違い

戦略的人材計画(Strategic Workforce Planning、以下SWP)は、企業が将来的なビジネス目標を達成するために、必要な人材を戦略的に計画・配置するプロセスです。短期的な採用計画とは異なり、中長期的な視点で組織の人材ポートフォリオを最適化することを目的とします。

特に急成長を遂げる企業や事業環境が変化しやすい業界においては、適切な人材の確保が競争優位性の鍵を握ります。本記事では、SWPの基本概念、導入のメリット、実施プロセス、成功のポイントについて解説します。

目次

戦略的人材計画(SWP)の基本概念

SWPは、組織の中長期的な目標に基づき、人材の確保・育成・最適配置を計画するプロセスです。単なる人員補充ではなく、事業戦略と連携し、将来の組織のあり方を見据えて人材戦略を立案します。

SWPが重要視される理由には以下のようなものがあります。

  • 市場環境の変化:DX(デジタル・トランスフォーメーション)やグローバル化が進み、必要なスキルセットが変化している。
  • 人材不足の深刻化:特に専門人材の獲得が難しくなっており、計画的な人材育成が不可欠。
  • 事業戦略との整合性:短期的な採用ではなく、長期的な組織の成長を見据えた人材戦略が求められる。

これらの背景を踏まえ、企業はSWPを導入し、競争力のある組織づくりを目指しています。

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SWPの読み方と、要員計画・タレントマネジメントとの違い

SWPは「エス・ダブリュー・ピー」と読み、Strategic Workforce Planning の頭文字をとった略称です。日本語では「戦略的人材計画」のほか、「戦略的要員計画」「戦略的ワークフォースプランニング」と訳されることもあります。

英語の workforce は「労働力」「従業員全体」、planning は「計画」を意味します。ワークフォースプランニング(workforce planning)は、組織に必要な労働力の量と質を見積もり、確保の方法を決める活動全般を指す言葉です。そこに strategic(戦略的)が付くと、事業戦略から逆算して中長期で考える、という意味合いが加わります。

要員計画(オペレーショナルな人員計画)との違い

ワークフォースプランニングは、時間軸によって2つに分けて説明されることが一般的です。

  • オペレーショナル・ワークフォースプランニング(要員計画):今期から来期にかけて、どの部署に何人必要かを決める計画です。欠員補充や繁忙期のシフト調整など、現在の事業を回すための人数合わせが中心になります。
  • ストラテジック・ワークフォースプランニング(SWP):3〜5年先の事業戦略を起点に、どんなスキルを持つ人材が、どのくらい、いつ必要になるかを考える計画です。今はまだ社内に存在しない役割も対象に含みます。

日本企業で長く使われてきた「要員計画」は、主に前者を指します。予算と人件費の枠の中で人数を決める発想のため、新規事業のように「今いない人材」が必要になる場面では、要員計画だけでは足りなくなります。

タレントマネジメントとの違い

タレントマネジメントは、社員一人ひとりのスキルや経歴を把握し、育成・配置・評価に活かす仕組みです。SWPと重なる部分は多いものの、見ている方向が違います。

  • SWP:事業戦略から出発し、「組織として何が必要か」を決める上流の計画です。社外から人材を調達する選択肢も最初から含みます。
  • タレントマネジメント:今いる社員から出発し、「一人ひとりをどう活かすか」を運用する仕組みです。SWPで決めた計画を実行するための手段の1つと位置づけられます。

人的資本経営・人材版伊藤レポートとの関係

日本でSWPが改めて注目されるようになった背景には、人的資本経営の広がりがあります。

経済産業省が2020年9月に公表した「人材版伊藤レポート」と、2022年5月の「人材版伊藤レポート2.0」は、人材戦略に求められる3つの視点として「経営戦略と人材戦略の連動」「As is(現状)とTo be(あるべき姿)のギャップの定量把握」「企業文化への定着」を挙げています。あわせて示された5つの共通要素の筆頭が「動的な人材ポートフォリオ」です。事業戦略に合わせて人材の構成を組み替え続けるという考え方で、SWPが目指すものとほぼ重なります。

さらに、2023年3月期以降の有価証券報告書では、上場企業などに「人材育成方針」と「社内環境整備方針」、その測定指標の記載が求められるようになりました。人材戦略を事業戦略と結びつけて説明する必要が生じたことで、SWPは人事部門だけの計画ではなく、経営として説明責任を負う計画になりつつあります。

SWPを導入するメリット

SWPを実施することで、企業は以下のようなメリットを得ることができます。

メリット1:人材の最適配置が可能になる

SWPでは、現在の人材構成と将来の事業計画を照らし合わせ、必要なスキルや人員を計画的に配置します。これにより、事業成長に必要なリソースを確保できるようになります。

メリット2:採用コストを削減できる

場当たり的な採用ではなく、中長期的な視点で計画的に人材を確保することで、無駄な採用コストを削減できます。特に、優秀な人材を早期に確保し育成することで、採用市場の変動に左右されにくくなります。

メリット3:従業員エンゲージメントが向上する

SWPの一環として、従業員のスキルアップやキャリア開発を支援することで、従業員のモチベーション向上につながります。適切な成長機会を提供することで、組織へのロイヤルティも高まります。

メリット4:事業環境の変化に柔軟に対応できる

市場環境の変化に応じた適切な人材戦略を立てることで、企業は不確実な状況にも柔軟に対応できます。例えば、新規事業の立ち上げやグローバル展開時にも、必要な人材をスムーズに確保できます。

戦略的人材計画の実施プロセス

SWPを実施するためには、以下のプロセスを踏むことが重要です。

プロセス1:ビジネス戦略の明確化

まず、企業の中長期的なビジネス戦略を明確にし、それに必要な人材要件を定義します。たとえば、3年後にDXを推進するためにデータサイエンティストが10名必要といった具体的な計画を立てます。

プロセス2:現状の人材分析

次に、現状の人材ポートフォリオを分析し、現在のスキルセットや配置状況を把握します。この際、人材データベースを活用し、従業員のスキルやキャリア志向も考慮します。

プロセス3:ギャップ分析(必要な人材との比較)

ビジネス戦略に基づく必要人材と、現状の人材との間にどのようなギャップがあるかを分析します。たとえば、データサイエンティストが不足している場合、外部採用・社内育成のどちらが適切かを検討します。

プロセス4:人材確保・育成計画の策定

ギャップ分析をもとに、採用計画や育成戦略を策定します。新規採用だけでなく、既存の人材のリスキリング(学び直し)も重要です。

採用や育成に加えて、業務委託やコンサルなど外部人材で補う選択肢もあります。方法ごとの違いは新規事業を外部人材に任せる方法の比較で整理しています。

プロセス5:定期的な評価・調整

人材計画は一度作成すれば終わりではなく、定期的に見直しを行い、ビジネス環境や組織の変化に応じて柔軟に調整することが求められます。

ギャップを埋める4つの手段(Build・Buy・Borrow・Bind)

ギャップ分析で足りない人材が見えたら、次はどう埋めるかを決めます。人事の実務では、確保の手段を英語の頭文字をとって「4B」と整理することがあります。

  • Build(育てる):既存の社員を育成・リスキリングして、必要なスキルを身につけてもらう方法です。定着しやすい一方、戦力になるまで時間がかかります。
  • Buy(採る):中途採用や新卒採用で、外部から社員として迎える方法です。長期の戦力になりますが、採用から立ち上がりまで半年以上かかることも珍しくありません。
  • Borrow(借りる):業務委託、副業・フリーランス人材、コンサルタントなど、外部の人材の力を必要な期間だけ借りる方法です。立ち上がりが早く、事業の進み具合に合わせて関わり方を変えられます。複数の仕事を組み合わせて働くポリワークが広がっていることも、この手段を取りやすくしています。
  • Bind(引き留める):今いる重要な人材が辞めないよう、処遇やキャリアの機会を整える方法です。採用より先に手を打つべき場面も多くあります。

このほか、社内の別部署から人を動かす「異動・配置転換」や、AIや自動化で業務そのものを置き換える選択肢を加えて考えることもあります。社内の人材を新しい役割に振り向ける発想は、クワイエットハイヤリングとして注目されています。

手段は「時間軸」と「不確実性」で選ぶ

4つの手段に優劣はありません。どれを選ぶかは、必要になる時期と、その役割が将来も続くかどうかで決まります。

  • 今すぐ必要で、将来も続く役割:Borrowで立ち上げながら、並行してBuyやBuildで社内に置き換えていきます。
  • 今すぐ必要だが、続くかどうか分からない役割:新規事業の初期のように不確実性が高い場面では、Borrowで始めて事業の手応えを見てから判断します。
  • 数年後に必要で、将来も続く役割:BuildやBuyで計画的に備えます。SWPの本領が最も発揮される領域です。

経営レベルの知見を週に数日だけ借りるフラクショナルCxOも、Borrowの一形態です。外部人材の探し方や、サービスごとの違いは副業・プロ人材サービス14選で比較しています。

中小・成長企業がSWPを小さく始める進め方

SWPというと大企業の人事部門の仕事に聞こえますが、考え方そのものは社員数十人の会社でも使えます。最初から精緻な計画をつくる必要はなく、次の4ステップで1枚のシートにまとめるところから始めるのが現実的です。

  1. 3年後の事業の姿を書く:売上の柱、新しく始める事業、やめる事業を箇条書きにします。
  2. 必要な「役割」を洗い出す:人数ではなく役割で書きます。「新規事業の責任者」「アライアンス担当」「データ分析」のように、今は社内にいない役割も含めます。
  3. 役割ごとに、今いる人で埋まるかを判定する:埋まる・育てれば埋まる・埋まらない、の3段階で十分です。
  4. 埋まらない役割に4Bを当てる:時期と不確実性を見て、Build・Buy・Borrow・Bindのどれで埋めるかを決め、半年ごとに見直します。

ステップ2で役割を洗い出す際は、限られた人員や予算をどこに振り向けるかというリソースアロケーションの考え方とセットで検討すると、優先順位をつけやすくなります。

SWPを成功させるためのポイント

SWPを成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

ポイント1:データドリブンで計画を立てる

勘や経験だけに頼るのではなく、人材データを活用した分析を行い、定量的なアプローチで計画を立てることが重要です。HRテクノロジーを活用し、継続的にデータを更新しましょう。

ポイント2:経営陣のコミットメントを得る

SWPは経営戦略と直結するため、経営陣の理解とコミットメントが不可欠です。定期的に人材戦略を議論し、経営層を巻き込むことが求められます。

ポイント3:社内の関係者と連携する

人事部門だけでなく、事業部門や管理職とも連携し、現場のニーズを反映させたリアルな人材計画を立案することが成功の鍵です。

ポイント4:継続的にPDCAを回す

計画を一度策定したら終わりではなく、定期的に見直しを行い、改善を繰り返すことで、より効果的な人材戦略を実現できます。

まとめ

戦略的人材計画(SWP)は、企業の長期的な成長を支える重要な施策です。適切な人材配置を行い、採用コストを抑えながら組織の競争力を強化することが可能になります。

SWPを成功させるためには、データ活用、経営陣のコミットメント、関係者との連携、そして継続的な改善が欠かせません。長期的な視点で人材戦略を考え、組織の持続的な成長を目指しましょう。

戦略的人材計画と近い発想として、正社員採用だけに頼らず外部人材やAIを組み合わせて労働力を設計するWDO(労働力設計の外部支援)もあわせて押さえておきたい考え方です。

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