AI Era、つまりAI時代と言われる昨今。SNSでもメディアでもAIに関するニュースや今後のトレンド予測、AIの活用方法といったノウハウ紹介などの情報であふれています。もちろんこのトレンドは間違っているとは思いませんし、AIを活用するスキルは、全産業においてビジネスパーソン必須のものとなることは疑いようがありません。
しかしその一方で、もっとも大事な行動習慣があり、それこそがAI時代に不可欠であると思います。その行動習慣がなければ、いくらAI活用のスキルを身に付けても意味がありません。
その行動習慣というのは、「できないことを自分でやってみようとする」ことだと思います。
これまでマーケティングや事業開発という仕事を軸にキャリアを歩んできた自分を例に出せば、リサーチや分析は調査会社が行い、広告運用は広告代理店が行い、LPやサイト制作はデザイナーやエンジニアが行う。契約書は法務が作成するし、請求書の仕訳は経理が行う。みなさんの会社でもよくある光景かもしれませんが、こうした分業制が当たり前でした。
それぞれ非常に高い専門性を求められる仕事ですから、分業を否定することはしません。でも、ひとつひとつの仕事においてその専門性は必須だったんでしょうか?自分自身を振り返っても、「ここはエンジニアじゃないとわからないから」「ここは法務に見てもらわないと」と、自分で調べ、自分で解決することから逃げてしまったことも多々あるように思います。ちょっとググって良い回答が出なければすぐに周囲に聞いてしまう。そんなことが日常茶飯事でした。
AIツールをくわしく知ることや活用することはとても大事ですが、それによって「今自分ができることを効率化して生産性を上げる」というのは、その価値の半分にも満たない。より価値があるのは、AIというツールを通して「今の自分にできないことをできるようになる」ことだろうと思います。よく言われるAIによる人間の能力拡張とは、そういうことではないかと思います。
たとえばサーバを自分で構築してサイトを作ってみる、たとえば広告バナーを自分で作って運用してみる、契約書やプライバシーポリシーを自分で作ってみる。忙しいからアシスタント的な役割を果たしてくれるAIエージェントを作ってみる。業務そのものを自動化して自分の関与をなくそうとしてみる。
そういう意思を持った人にとっては、AIは非常に強力なサポーターになります。やり方を聞けば丁寧に教えてくれますし、いざやってみてバグやエラーが出たり、思った動きをしないことがあっても、スクショを送ればアドバイスをもらえます。自動化・効率化したい業務を送れば、どんなやり方ができそうかも調べて教えてくれます。そして、やってみれば意外とできることに気付けるはずです。
AIからせっかく良いアドバイスをもらっても、やってみなければその知識は活きません。未知の業務であっても、元の要求を言語化し、実装し、エラーを修正し、そしてまた実装する。この繰り返しこそが、能力拡張に必要なプロセスです。このプロセスを経ない限り、自分の能力を拡張することはできません。自ら実装し続ける他人にどんどん仕事を奪われていくでしょう。NVIDIAのジェン・スン・ファンCEOが言っていた「AIが仕事を奪うのではなく、AIを使いこなす人たちによって淘汰される」というのはまさにこういうことです。
日々新たなツールがどんどん出てきています。最新のツールをキャッチアップすることももちろん必要ですが、それらを使って自分の周辺にある仕事へ、一歩踏み出してチャレンジしてみる。それがもっと大事なことではないかと思います。