


事業開発(BizDev)とプロダクトマネジメント(PdM)は、どちらも事業成長の中核を担う職種でありながら、その境界線は曖昧になりがちです。
両者の違いを端的に捉えるならば、BizDevはBtoB領域、PdMはBtoC領域のグロースに責任を持つという点にあります。本記事では、このBtoB・BtoCという軸を起点に、両者の役割の違いと協業の価値、そして連携を成功させるための具体的な方法論をお伝えします。
BizDevとプロダクトマネジメントの役割を理解するうえで、最もわかりやすい軸が「誰に対するグロースに責任を持つか」という視点です。
BizDev(事業開発)は、法人パートナーや企業顧客といったBtoB側のグロースを主に担うケースが多いです。アライアンスの構築、販売チャネルの開拓、法人向けの価格設計や契約交渉など、対企業の関係構築を通じて事業を拡大していく役割です。一方、PdMはエンドユーザーや個人利用者といったBtoC側のグロースに軸足を置きます。ユーザー体験の最適化、機能の優先順位づけ、リテンション向上のための改善施策など、プロダクトそのものの価値を高めることでユーザー基盤を拡大する職種です。
もちろん、現実のビジネスではBtoBとBtoCが明確に分かれないケースも多く存在します。たとえば、SaaSプロダクトでは法人契約(BtoB)でありながら、実際の利用者は個々の社員(BtoC的な体験)です。このような場面で両者の担当範囲が曖昧になりやすいのですが、グロース責任の軸を意識しておくことで、役割分担の議論がスムーズに進みます。
BizDevとPdMの連携が不可欠な理由は、BtoB視点とBtoC視点を掛け合わせることで、事業戦略の精度が飛躍的に高まるからです。
BizDevが持つBtoB視点とは、市場全体の構造やパートナーの事業課題、業界の商慣習を深く理解したうえでの判断軸です。対してPdMが持つBtoC視点とは、実際のユーザーがプロダクトをどう使い、どこに不満を抱え、何を求めているかという体験ベースの判断軸です。どちらか一方だけでは、事業の全体像を捉えた意思決定は困難です。
具体的な例を挙げましょう。あるSaaS企業が大手企業との提携を進めるケースでは、BizDevが先方の経営課題や導入条件を交渉します。しかし、PdMの視点がなければ、提携先の社員が実際にプロダクトを使いこなせるかどうか、オンボーディング体験に問題はないかといったBtoC的な課題を見落としてしまいます。逆にPdMだけでは、提携先のビジネス要件や契約上の優先事項を正確に把握することが難しくなります。
BtoB側の商機を確実に獲得しながら、BtoC側のプロダクト体験も同時に磨く。この両輪が回ることで、事業成長は持続的なものになります。
BizDevのBtoB視点とPdMのBtoC視点が効果的に連携すると、大きく3つの価値が生まれます。
1つ目は「市場ニーズとプロダクト体験の一致」です。BizDevが法人顧客やパートナーから収集したビジネス要件を、PdMがエンドユーザーの利用文脈に落とし込むことで、商談で売れるだけでなく現場で使われるプロダクトが生まれます。BtoBの要件とBtoCの体験が乖離しないよう、両者が情報を共有することが不可欠です。
2つ目は「Go-to-Market戦略の立体化」です。PdMがプロダクトの強みをユーザー視点で明確にし、BizDevがそれを法人向けの提案ストーリーに変換します。エンドユーザーに刺さる訴求と法人の意思決定者に響く提案が一体となることで、受注率と定着率の両方を高められます。
3つ目は「解約率の低減と契約拡大の同時実現」です。BtoB契約では導入後の活用度合いが継続を左右します。PdMがBtoC視点でエンドユーザーの利用定着を支え、BizDevがBtoB視点で法人側の成果をレポートする。この両面からのアプローチにより、解約の抑止とアップセルの両立が可能になります。
これら3つの価値は、BtoB・BtoCのどちらか一方だけを見ていては実現できません。
BizDevとPdMの連携を属人的なコミュニケーションに頼らず、組織的に機能させるための仕組みを3つご紹介します。
1つ目は「BtoB・BtoCの双方向フィードバックループの設計」です。BizDevが法人顧客から得た要望や不満を定期的にPdMへ共有し、PdMがユーザーの利用データや改善結果をBizDevへフィードバックする仕組みを構築します。週次もしくは隔週の定例ミーティングで議題を事前に設定し、情報の流れを双方向に保つことがポイントです。
2つ目は「共通OKRの設定」です。BizDevが法人契約数、PdMがユーザーアクティブ率といったように、別々の指標だけを追うと優先順位が衝突しがちです。四半期ごとに「NRR(売上継続率)の改善」など、BtoBとBtoCの成果が統合される共通のOKRを設定することで、同じゴールに向けた協業が促進されます。
3つ目は「商談・ユーザーインタビューへの相互同席」です。PdMが法人顧客との商談に同席してビジネス要件を肌で理解し、BizDevがユーザーインタビューに参加してエンドユーザーのリアルな声を聞く。このクロスファンクショナルな体験が、相互理解の解像度を大きく引き上げます。
フレームワークの導入後も定期的に振り返りを行い、運用を改善し続けることが成功の鍵となります。
近年、BizDevとプロダクトマネジメントの両方のスキルを備えた人材への需要が急速に高まっています。その背景には、BtoBとBtoCの境界が曖昧化し、両方の視点を持って事業全体のグロースを設計できる人材が求められていることがあります。
従来、BizDevとPdMは別のキャリアトラックとして認識されてきました。しかし、SaaS企業やプラットフォーム事業を中心に、BtoB側のパートナー戦略とBtoC側のプロダクト成長の両方を理解した人材が高く評価される傾向が強まっています。たとえば、プロダクト・レッド・グロース(PLG)を採用する企業では、プロダクト体験でユーザーを獲得しながら法人契約へ転換する戦略が主流です。この戦略を推進するには、BtoCのグロースハックとBtoBの営業・提携の知見を併せ持つ人材が欠かせません。
キャリア構築のアプローチとしては、まず現在の専門領域を深めつつ、隣接領域の実務を経験することが効果的です。BizDev担当者であればPdMが主導するユーザーリサーチやスプリントレビューに積極的に参加し、PdMであれば法人顧客への提案や契約交渉の場に同席する機会を作りましょう。
BtoBとBtoCの両面からグロースを語れることは、マネジメントポジションや事業責任者への昇進においても大きなアドバンテージとなります。
本記事では、BizDevとプロダクトマネジメントの境界線をBtoB・BtoCのグロース責任という軸から整理しました。BizDevは法人パートナーや企業顧客向け、PdMはエンドユーザー向けの成長に責任を持ち、両者が連携することで「市場ニーズとプロダクト体験の一致」「Go-to-Market戦略の立体化」「解約率低減と契約拡大の同時実現」が可能になります。BtoB・BtoC両方のグロース視点を持つ人材こそが、これからの事業開発において不可欠な存在です。
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