


事業を伸ばしたいとき、これまでは「人を採用する」ことが組織づくりの第一手でした。しかし、専門人材の不足やAIの台頭により、正社員の採用だけですべての機能をそろえる前提は、少しずつ現実的ではなくなっています。そこで注目され始めているのが、WDO(Workforce Design Outsourcing:労働力設計の外部支援)という考え方です。本記事では、WDOとは何か、なぜ今求められているのか、そして自社の組織づくりにどう取り入れるかを、具体的なステップとともに解説します。
WDO(Workforce Design Outsourcing)とは、企業の事業課題に対して、必要な労働力のあり方そのものを設計し、その実行までを外部から支援する取り組みを指します。直訳すれば「労働力設計の外部支援」です。
従来の採用代行や人材紹介が「決まったポジションに、条件に合う人を充てる」ことを役割としていたのに対し、WDOはその一歩手前、「そもそも、この事業課題にはどんな労働力の組み合わせが最適か」という問いから出発します。
正社員、業務委託の専門人材、顧問、外部パートナー、AI、そして既存社員の配置転換。これらをどう組み合わせ、どのようなチームをつくるべきかを設計することが、WDOの中心にあります。
背景には、大きく3つの変化があります。
1つ目は、専門人材の不足です。新規事業や事業開発、DX、AI活用といった領域、とりわけ国が掲げる戦略17分野のような成長領域では、必要なスキルを持つ人材が市場全体で足りておらず、正社員として採用しようとしても、戦力化できるまでに時間がかかります。
2つ目は、スピードへの要求です。事業環境の変化が速くなるなかで、必要な機能を「採用が決まってから」立ち上げていては間に合わない場面が増えています。
3つ目は、AIの台頭です。これまで人手で担っていた業務の一部をAIが代替できるようになり、「どの仕事を人が担い、どの仕事をAIに任せるか」という設計そのものが、組織づくりの論点になりました。こうした変化のなかで、正社員の採用だけを前提にした組織づくりは、かえって選択肢を狭めてしまいます。だからこそ、複数の手段を組み合わせて設計するWDOの発想が必要とされています。
WDOと従来型の人材サービスの違いは、向き合う「問い」の高さにあります。
従来の人材紹介では、企業から受け取った求人票を起点に、その要件に合う候補者を探すことが主な役割でした。問いは「このポジションに合う人は誰か」です。
一方WDOでは、その前段にある「この事業課題に対して、どのような組織体制が最適なのか」という、より上流の問いに向き合います。場合によっては「ここは今すぐ採用しないほうがよい」という結論に至ることもあります。
つまりWDOは、人材を供給するサービスというよりも、事業の成果から逆算して労働力を設計するパートナーに近い存在だといえます。
WDOで設計の対象になる主な選択肢は、次の6つです。
正社員は、企業文化をつくり、長期的に事業を担う組織の中核です。業務委託の専門人材は、特定領域の高い専門性を、必要な期間だけ機動的に確保できます。顧問・アドバイザーは、経営や事業戦略の知見を要所で借りることができます。外部パートナー企業との協業は、自社にない機能をまるごと補完します。AIは、定型業務や情報処理を担い、少人数でも生産性を高めます。そして既存社員の配置転換は、社内に眠る人材を成長領域へ振り向ける打ち手です。
重要なのは、これらを「どれか1つ」で選ぶのではなく、事業フェーズに応じて組み合わせることです。立ち上げ期は外部人材とAIを厚めに、軌道に乗ったら徐々に内製へ移していくというように、時間軸を持って労働力のポートフォリオ(組み合わせ)を設計していきます。近年はAIの選択肢のなかでも、特定業務に特化したバーティカルAI(業界特化型AI)が実用域に入り、AIに任せられる業務の幅が広がっています。
WDOの考え方は、必ずしも外部に委託しなくても、自社の組織づくりに取り入れることができます。明日から始められる4つのステップで整理します。
ステップ1は「事業課題の言語化」です。組織の話に入る前に、「この事業で、いつまでに、何を実現したいのか」を明確にします。労働力の設計は、事業ゴールから逆算して初めて意味を持ちます。
ステップ2は「機能の分解」です。そのゴールに必要な機能を、職種や役割の単位で書き出します。「営業責任者を採用する」ではなく、「新規開拓」「既存深耕」「商談設計」といった機能に分解すると、担い手の選択肢が一気に広がります。
ステップ3は「担い手の割り当て」です。分解した機能ごとに、正社員・外部人材・AI・配置転換のどれで担うかを決めます。ここで「すべて正社員で」という前提を一度外すことが、設計の幅を生みます。
ステップ4は「実行と見直し」です。設計したチームで事業を動かしながら、機能の過不足を定期的に振り返り、内製と外部活用の比率を調整していきます。
WDOが広がる時代に、企業や事業開発の担当者に求められるのは、「人を採用する力」から「組織を設計する力」への発想の転換です。
採用はあくまで手段の1つであり、ゴールは「事業を前に進める最適なチームをつくること」にあります。正社員・外部人材・AIを横断的に捉え、事業フェーズに合わせて最適な形を描けるかどうかが、これからの組織づくりの巧拙を分けていきます。
もちろん、正社員は組織の中核であり、その価値が下がるわけではありません。WDOは内製を否定するものではなく、内製と外部活用の最適なバランスを設計するための考え方です。経営機能そのものを業務委託で部分導入する具体策としては、フラクショナル・エグゼクティブ(フラクショナルCxO)とは?経営を「部分導入」する新しい選択肢もあわせてご覧ください。
WDO(Workforce Design Outsourcing)は、正社員の採用だけに頼らず、外部人材やAIを含めた複数の選択肢を組み合わせて、事業課題に最適な労働力を設計する新しい発想です。専門人材の不足、スピードへの要求、AIの台頭という変化のなかで、「採用するか・しないか」の二択を超えて労働力のポートフォリオを描く視点は、規模を問わずあらゆる企業にとって有効です。talentalは、BizDev領域に特化した外部人材の活用と、AIを起点とした組織戦略の支援を通じて、企業の事業フェーズに合わせた労働力設計を伴走支援しています。新規事業や事業開発の立ち上げで「最適なチームのつくり方」に悩んだときは、ぜひ一度ご相談ください。
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