


起業を目指す方や、スタートアップ経営に携わる方にとって「出口戦略」は事業設計と並んで極めて重要なテーマです。
従来はIPOやM&Aが主流でしたが、最近注目されているのが「2段階イグジット」という柔軟な手法です。本記事では、2段階イグジットの仕組みやその背景、メリット・リスク、具体的な活用事例までを解説します。
これから起業を考えている方にとって、将来の選択肢を広げるための実践的な知識をお届けします。
2段階イグジットとは、スタートアップが最終的なイグジット(M&AやIPO)を迎える前に、一部の株式を戦略的パートナーやファンドに売却し、段階的に資本や経営権を移行していく出口戦略の一つです。
例えば、創業者が保有株の一部を先に売却することで資金を回収しつつ、経営には引き続き関与。数年後に残りの株式を売却し、最終的な完全イグジットに至るという流れです。
この手法は、資本と経営の柔軟な分離を可能にし、急激なオーナー交代を避けながら事業成長を加速させることができます。
近年、IPOまでの期間が長期化し、資金調達やイグジットの多様化が進んでいます。その中で、創業者が「いつ」「どのように」リターンを得るかがより複雑になり、従来の単一イグジットでは不十分なケースも増えています。
2段階イグジットは、早期に一部の株式を現金化できるため、創業者にとって精神的・資金的な余裕を持ちながら経営を継続できる点が大きな魅力です。また、戦略的パートナーの関与により、事業シナジーを活かした成長加速も見込めます。
こうした背景から、初期の段階で「どんな出口戦略を描くか」は、起業時点から設計しておくべき重要なテーマとなっているのです。
メリットとしては、①早期の資金回収、②経営継続の柔軟性、③戦略パートナーとの協業による成長加速、の3点が挙げられます。特に、家族や個人資産の安定化を図りたい創業者にとって、一定のリスクヘッジが可能になる点は大きな価値です。
一方でリスクも存在します。たとえば、早期に経営権を一部譲渡することによって、意思決定のスピードが落ちる場合があります。また、最終的な売却先やタイミングがパートナー側の都合に左右されるリスクもあります。そのため、契約時の条件設計やExitのタイミングをどう描くかが重要なポイントとなります。
たとえば、国内のあるBtoB SaaS企業は、シリーズBラウンドで大手事業会社から資本参加を受け、一部株式を譲渡。パートナー企業と業務提携を深めながら数年間で売上を3倍に伸ばし、その後、戦略的なM&Aによって完全買収されました。このケースでは、2段階での資本移動があったことで、初期の段階で創業者が一部リターンを確保しつつ、パートナーシップを最大限に活かして企業価値を高め、最終的なバリュエーションを向上させることに成功しています。このように、出口を見据えた設計が中長期の成果に繋がる好例といえるでしょう。
起業家が事業を立ち上げる際には、「誰に、どのような形でバトンを渡すのか」を視野に入れた出口戦略の設計が不可欠です。2段階イグジットを前提にすることで、「段階的な経営承継」「戦略的パートナーシップの活用」「バリュエーション向上の時間的猶予」といった多様なオプションを描くことが可能になります。そのためには、VCや事業会社との契約設計、資本政策、ストックオプションの設計など、初期段階から緻密な準備が求められます。
単なる資金調達手段としてではなく、事業と人生の両面を支える戦略として「2段階イグジット」を活用すべきです。
2段階イグジットは、創業者が一部の株式を早期に現金化しつつ、事業成長を続けた上で最終的なイグジットを実現する柔軟な戦略です。
起業前から出口設計を考えておくことで、事業の持続性と経営者自身の安定の両立が可能になります。今後のスタートアップ経営における「選べる出口戦略」として、ぜひ検討したい手法です。
副業をお考えのみなさんへ
ご覧いただいている『月刊タレンタル』を運営するtalental(タレンタル)株式会社では、BizDev領域の即戦力人材レンタルサービス「talental」を提供しています。
現在、副業・フリーランス人材のみなさんのご登録(タレント登録)を受け付けています。タレント登録(無料)はこちらから。
これまで培ったスキルやノウハウを活かして、さまざまな企業のプロジェクトに参画してみませんか?