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正社員を採用せずに新規事業の体制をつくる方法 社内の責任者1人と外部人材・AIで回す、フェーズ別の組み方

公開日 更新日 新規事業の責任者向け

新規事業を始めたいが、正社員を採用するには事業の先がまだ見えない。採用しても、方向転換したときに役割が合わなくなるかもしれない。こうした場合、人を増やす前に「誰が何を持つか」という体制を先に決めると、採用せずに進められる範囲がはっきりします。社内の責任者1人と外部人材・AIで回す体制の組み方を、フェーズ別に整理します。

調査時点:2026年10月26日/費用の目安は時間単価1万円で計算しています。

この記事の結論

  • 意思決定を持つ社内の責任者を1人置き、実務を外部人材とAIで分担すれば、正社員を採用しなくても新規事業の体制はつくれます。
  • 社内に残すのは判断・予算・社内調整、外部人材に任せるのは検証や営業開拓などの判断を伴う実務、AIに任せるのは下調べや記録の整理です。
  • 正社員の採用は、事業を続けることが決まり、仕事の中心が運用に移った段階で始めます。それまでは固定費を増やさない体制のほうが、判断を誤りにくくなります。

なぜ採用から始めないほうがいいか

新規事業の立ち上げで最初に人を採ろうとすると、3つの問題にぶつかります。

1. 経験者が採れない

事業開発の経験者は転職市場に出てくる人が少なく、採用には時間がかかります。新規事業の担当者を対象にした調査でも、課題の1位は人材の確保でした。

2. 採れるまで事業が止まる

募集から入社までに数カ月、入社後の立ち上がりにも時間がかかります。その間、検証は進みません。

3. 方向転換で役割が合わなくなる

新規事業は検証の結果で方向が変わります。最初に決めた役割で採った人が、変わった後の事業に合うとは限りません。撤退した場合は、人だけが残ります。

38.9%

新規事業開発の課題として「新規事業開発を担う人材の確保が困難」を挙げた担当者の割合。課題の1位でした。出典:パーソル総合研究所「企業の新規事業開発における組織・人材要因に関する調査」(2021年調査、従業員300名以上の企業の新規事業担当者 n=1,800)

採用が悪いわけではありません。採用が投資として合うのは、事業の形が固まってからです。それまでの期間を、固定費を増やさずにどう進めるかが体制づくりの論点になります。

武田 直人 talental株式会社代表取締役社長

事業開発の現場から

新規事業の立ち上げは、技術や知識、ノウハウといった観点ももちろん重要ですが、それ以上に自分が責任者として事業を牽引するんだというマインドセットがもっとも重要です。その点で言えば正社員採用ができればベストではあります。

しかし、現状の市場環境を考えると、企業が求める経験を持つ人材を採用するのは非常に難しく、機を逸することにさえなりかねません。先述した事業の形を固めるところまでは外部人材をうまく活用してスピーディーに実行していくことが必要だと考えています。

体制の基本形:社内に残す役割と外に出す役割

採用せずに進める体制は、役割を「社内に残すもの」「外部人材に任せるもの」「AIに任せるもの」の3つに分けるところから始まります。人数を先に決めるのではなく、役割を先に決めます。

社内に残す

  • 事業をやるかやめるかの判断
  • 予算の確保と配分
  • 社内の関係部署との調整
  • 顧客との約束(契約・価格の決定)

会社として責任を持つことと、社内の事情を知らないとできないこと。

外部人材に任せる

  • 仮説の立て方と検証の設計
  • 顧客インタビュー・初期の営業
  • 提携先の探索と初回の交渉
  • 売り方・提案資料の型づくり

経験の有無で質が大きく変わる、判断を伴う実務。

AIに任せる

  • 市場・競合の下調べ
  • 議事録・記録の整理
  • 資料やメールのたたき
  • データの集計と整形

材料をそろえる作業。最終的な判断には使わない。

社内に必ず残すのは「決める人」です。実務をすべて外に出しても、事業をやるかやめるか、予算をどう使うかは会社として決めることだからです。この1人がいれば、担当者が少なくても体制は回ります。

社内の責任者は専任でなくてもかまいません。経営者や事業部長が兼務で務める場合も多くあります。ただし週に一度は外部人材と話す時間を確保できることが条件です。合議で決める形にすると、前例のない案ほど誰かの懸念で止まり、外部人材を入れた意味が薄れます。

フェーズ別の組み方

同じ「採用せずに進める」でも、事業の段階によって必要な人数と稼働は変わります。月額は外部人材の時間単価を1万円とした場合の目安です。

0→1(仮説の検証)

体制
社内の責任者1人+外部人材1人
稼働
外部人材は月20〜30時間
月額の目安
月20万〜30万円程度

検証するテーマを1つに絞り、顧客の声を集めて「やるかやめるか」を判断できる材料をそろえる段階です。人数を増やしても検証は速くなりません。責任者と同じ解像度で話せる相手が1人いれば足ります。

1→10(売り方の型づくり)

体制
社内の責任者1人+外部人材1〜2人
稼働
外部人材は1人あたり月30〜50時間
月額の目安
月30万〜100万円程度

初期の売上が立ち始め、売れた理由を再現できる形にする段階です。営業の経験者に、売りながら型をつくってもらいます。社内では、型を引き継ぐ担当者を決め始めます。

10→100(拡大)

体制
正社員の採用を始める+外部人材は新しい線を引く役に
稼働
外部人材は必要なテーマの分だけ
月額の目安
採用費・人件費が中心になる

型が回り始めたら、運用は正社員に移します。外部人材は、次のチャネルや提携など、社内のメンバーが既存の伸ばし方に集中している間に別の線を引く役割に移ります。ここで初めて、正社員の採用が投資として合う段階になります。

人数を増やすより、任せるテーマを絞るほうが効きます。同じ稼働時間でも複数のテーマに分散すると、どれも判断材料がそろわないまま期間が終わります。

月額の組み方と予算の決め方は「事業開発を外部人材に任せる費用」へ →

AIを前提にした役割分担

生成AIが使えるようになり、新規事業の立ち上げで人が担う範囲は変わりました。市場や競合の下調べ、議事録の整理、資料やメールのたたきづくりは、AIに任せると短い時間で済みます。その分、外部人材の稼働を判断を伴う実務に集中させられるため、同じ予算でも進む量が変わります。

仕事 AIに任せる部分 人が担う部分
市場の調査 公開情報の収集と整理、競合の一覧づくり どの仮説を検証するかを決める
顧客の検証 質問項目のたたき、インタビュー記録の要約 顧客と話し、反応の意味を読み取る
営業・提携 提案資料やメールの下書き 相手との関係づくりと条件の交渉
社内の意思決定 判断材料のとりまとめ やるかやめるかを決め、責任を持つ

AIで置き換えられるのは材料をそろえる作業です。顧客や提携先と向き合って反応を読むこと、判断して責任を持つことは、人にしかできません。AIを使うほど、人に任せる部分の質が成果を分けます。

外部人材を確保する手段の比較

外部人材の確保には、いくつかの手段があります。判断を伴う実務まで任せたいか、助言だけでよいかで選ぶ手段が変わります。

手段 着手までの速さ 任せられる範囲 注意点
個人と直接の業務委託 相手が見つかれば早い 判断を伴う実務まで任せられる 探す・見極める・契約の手間は自社で負う
業務委託のサービス経由(エージェント型・人材レンタル型など) 数週間〜1カ月程度 判断を伴う実務まで任せられる 人材への報酬に利用料・手数料が加わる
スポットコンサル 早い(1時間単位) 助言・壁打ちまで 実務は社内に残る
コンサルティング会社 提案・契約に時間がかかる 調査・計画・実行支援までチームで 費用が大きく、知見が社内に残りにくいことがある
在籍型出向の受け入れ 企業間の取り決めが必要で時間がかかる 社員に近い形で任せられる 受け入れ先が限られ、期間も相手企業の事情に左右される

採用せずに体制をつくる場合、軸になるのは業務委託です。スポットコンサルは方向性の確認には向きますが、実務は社内に残ります。どの手段でも、個人に業務委託する場合は作業の進め方や時間・場所を社員と同じように指示・拘束しないことが前提です。

正社員に切り替える判断のタイミング

採用せずに進める体制は、ずっと続けるものではありません。次のどれかに当てはまったら、正社員の採用を検討する段階です。

1. 仕事の中心が「判断」から「運用」に移った

検証が終わり、決まったことを毎日回すことが仕事の中心になったら、外部人材より社内の人のほうが合います。運用は、社内に知見を残すべき仕事だからです。

2. 必要な稼働が増え続けている

外部人材の稼働を毎月増やしても足りない状態が続くなら、事業がフルタイムの担当者を必要とする段階に来ています。

3. 事業を続けることが決まった

撤退の可能性が残っているうちは、固定費を増やさない体制のほうが判断を誤りにくくなります。続けると決めた時点が、採用を検討する時点です。

業務委託で一緒に働いた人に、そのまま正社員として入ってもらう方法もあります。事業開発の人材は経歴書だけでは見極めにくいため、実際に一緒に働いた期間は最も確かな判断材料になります。ただし本人が正社員を希望しない場合もあるので、切り替えの可能性は早めに話しておきます。

業務委託の接点から採用につなげる方法は「転職潜在層に採用でリーチする方法」へ →

よくある失敗

採用せずに進める体制がうまくいかないときは、多くの場合、社内に残すべき役割まで外に出してしまっています。

外部人材への丸投げ

「新規事業を考えてほしい」とだけ依頼すると、社内の誰も判断の材料を持たないまま期間が終わります。任せるのは実務で、判断は社内の責任者に残します。

社内の責任者が不在、または兼務で動けない

体制の要は社内の責任者です。責任者が週に一度も時間を取れないと、外部人材の稼働の多くが判断待ちに消えます。合議で決める形も同じで、誰が決めるかを1人に決めておく必要があります。

記録が社内に残らない

検証の結果や判断の理由が外部人材の手元にしか残らないと、契約が終わった時点で何も残りません。最初から社内の共有場所に記録する運用にしておきます。

失敗の7つのパターンと契約前のチェックリストは「外部人材に事業開発を任せて失敗するパターン」へ →

talentalの位置づけ

talentalは、BizDev(事業開発)領域の実務経験者に特化した、エージェント型の業務委託サービスです。月1時間から契約でき、任せる内容が固まっていない段階から相談できるため、社内の責任者1人で新規事業を始める体制に組み込みやすい形になっています。登録者の経験ポジションは「取締役・CXOクラス」が45.8%、「部長・次長クラス」以上が68.3%です(2026年9月26日時点)。

料金

月50,000円〜

希望時給×稼働時間×管理費。初期費用はかかりません。

稼働

月1時間〜

最低契約期間は3カ月〜。

契約の切り替え

業務委託(直接契約)へ

一律120万円

雇用契約へ

理論年収の40%

向いているのは、社内に判断する人が1人いて、検証したいテーマが決まっている場合です。実務を毎日担う人手が必要な場合や、常駐に近い稼働を求める場合は、別の手段のほうが合っています。

talentalのサービス詳細を見る →

よくある質問

正社員を採用せずに新規事業の体制をつくる方法はありますか?

あります。意思決定を持つ社内の責任者を1人置き、仮説の検証や営業開拓などの実務を業務委託の外部人材に、下調べや記録の整理をAIに分担する形です。事業を続けるかどうかが決まるまでは固定費を増やさずに進められ、型が回り始めた段階で運用を正社員に移します。外部人材の確保には、個人との直接の業務委託、業務委託のサービス、スポットコンサル、コンサルティング会社、在籍型出向の受け入れといった手段があります。

採用せずに即戦力を確保するにはどうすればいいですか?

業務委託で経験者に入ってもらうのが現実的です。事業開発の経験者は転職市場に出てくる人が少なく、パーソル総合研究所の調査(2021年)でも新規事業開発の課題の1位は「新規事業開発を担う人材の確保が困難」(38.9%)でした。一方で、副業や業務委託であれば経験者に関わってもらえる余地があります。talentalの登録者(2026年9月26日時点)では、経験ポジションが「取締役・CXOクラス」の人が45.8%、「部長・次長クラス」以上が68.3%でした。最初に任せるテーマを1つに絞ると、短い稼働でも成果が見えやすくなります。

社内に新規事業の担当者がいなくても始められますか?

担当者の人数は少なくてかまいませんが、判断する人は社内に1人必要です。外部人材は実務を担えますが、事業をやるかやめるか、予算をどう使うかは会社として決めることだからです。専任を置けない場合は、経営者や事業部長が兼務で責任者になり、週に一度は外部人材と話す時間を確保してください。

費用はどれくらいかかりますか?

外部人材の時間単価を1万円とすると、最初の検証段階(月20〜30時間)で月20万〜30万円程度が目安です。売り方の型をつくる段階で外部人材を1〜2人にすると、月30万〜100万円程度になります。talentalの場合、想定時給は個人差がありますが概ね1万円前後が多く、実際の稼働は月20〜50時間が多くなっています。サービス経由の場合は、人材への報酬に利用料や手数料が加わるかどうかを確認してください。

いつ正社員を採用すべきですか?

仕事の中心が判断から運用に移ったとき、外部人材の稼働を増やしても足りない状態が続くとき、事業を続けることが決まったときが目安です。業務委託で一緒に働いた人に正社員として入ってもらう方法もあり、経歴書だけでは見極めにくい事業開発の人材では合理的な選び方です。

出典・調査時点

本記事の内容は2026年10月26日時点の情報にもとづきます。フェーズ別の体制・稼働・月額は、外部人材の時間単価を1万円とした場合の目安で、事業の内容や契約条件によって異なります。

黄 千尋

EDITOR

この記事の編集

黄 千尋こう ちひろ

talental ディレクター

2015年よりフリーランスのライター・編集ディレクター・広報として活動し、2024年9月にtalentalへ参画。タレントのサポートを担当しながら、外部人材の活用に関するガイドの編集を担当している。

武田 直人

COMMENT

事業開発の現場からのコメント

武田 直人たけだ なおと

talental株式会社 代表取締役社長

2005年にソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社し、マーケティング部門・経営企画部門の責任者を務める。2017年に自ら起案した事業を子会社として設立し、代表取締役副社長に就任。2024年9月にtalental株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。