ちょっといつもと趣向を変えて、私自身がふだん考えているビジネスアイデアや、そこで調べたことなどをアウトプットしていくようにしたいと思います。
今回のテーマは、人材紹介とM&A仲介のビジネスモデルの類似性についてです。
人材紹介が「人」と「企業」をマッチングし、その成果に応じてマネタイズするのが基本であるのに対して、M&A仲介は扱う商材が「企業」となり、「企業」と「企業」をマッチングすることによってマネタイズするビジネスです。扱う商材に違いこそあれ、調べていくととても類似していることに驚きます。
まあ企業が人の集合体である以上、あたりまえといえばあたりまえなのですが、こうやって類似する市場を見ると、次に生まれるであろうビジネスモデルも考えやすいので、たまに頭の体操としてこんなことを考えています。
すでに許認可制になっている人材紹介と、これから許認可制になるであろうM&A仲介
もともと職業安定法によって一部の領域を除き禁止されていた職業紹介。1985年・1999年それぞれに行われた職業安定法の改正を契機に、民間の人材紹介事業は急速に拡大しました。人材紹介事業者の数はその参入障壁の低さもあり年々増加傾向、2025年段階では3万件を突破しています。
一方、M&A仲介は制度的に禁止されていたわけではありませんが、法的枠組みがなかったこともあり2000年代では事業者の数も多くはありませんでした。しかし、企業の事業承継ニーズの高まりによってM&A仲介事業者も年々増加。現在では3,000件を超えているようです。この5年で2倍以上に増えており、今後も増加すると思われます。
参考:
民営職業紹介事業所数の推移(厚生労働省)
登録M&A支援機関数(中小企業庁)
こうした環境下で、M&Aにおける手数料体系の不透明さやM&Aプロセスにおけるトラブルなども問題視されており、経済産業省では各種ガイドラインの整備を進めており、今後許認可制への移行も検討されています。
参考:
M&Aに関する各種ガイドライン及び出版物(経済産業省)
こうした変遷も、人材紹介とM&A仲介が似ている部分でしょう。
属人性が強く、独立しやすい構造
労働人口という国内の最重要課題ともいえる問題が「人」と「企業」のいずれにも影響するテーマである以上、人材紹介もM&A仲介も市場成長性という意味では伸びる業界だと思われますが、それ以上に、参入障壁が比較的低く一定の顧客資産を持つビジネスパーソンであれば独立しやすい(能力のあるプレイヤーであれば独立したほうが稼げるため、独立するインセンティブが強い)というのも、事業者数の増加に拍車をかけています。
先の中小企業庁の「登録M&A支援機関数(2025年7月22日現在)」によれば、登録数合計3,017件のうち、法人が2,305件であるのに対して、個人事業主がなんと712件(23.6%)と4分の1近くを占めています。この事実からも、前述した独立のしやすさというのが裏付けられていると思います。
人材紹介で起きたサービスの多様化が、M&A仲介市場でも起きていく
このように、市場そのものも拡大するし、プレイヤーの数も増えることがある程度確からしいのが、人材紹介とM&A仲介に共通する要素だと思います。そして、市場の成り立ちを見ると、人材紹介がやや先行しているという状況にあります。人材紹介市場におけるサービスの変遷を見れば、M&A仲介市場においても、今後どんなサービスが出てくるかを想像することができるかもしれません。
人材紹介、というよりも若干広く、「正社員の中途転職市場」と捉え、そこで発生しているサービスを見てみましょう。
- 人材紹介(総合型、特化型)
- 求人サイト(リクナビNEXT、en転職など)
- アグリゲートサイト(indeed、求人ボックス、キャリアインデックスなど)
- RPO(スカウト代行、面接代行など)
中途転職市場では上記のようなサービスが出てきていますが、これをM&A仲介に置き換えて考えてみましょう。人材紹介のようにエージェントがマッチングするモデルが一般的なM&A仲介、求人サイトのようにオープンな情報にエントリーするダイレクトマッチングのモデルも「TRANBI」のようなサービスが存在します。
indeedやキャリアインデックスのように複数のポータルをまとめたアグリゲートサイト型のサービスはまだ出てきてないのかな?今後出てくるかもしれませんね。RPOのようにダイレクトソーシングを支援するような事業者も少し出てきていると聞いていますので、今後盛り上がってくる可能性も十分あるでしょう。
また、上記ほど大きなマーケットではないかもしれませんが、人材紹介会社への集客ポータルのような、M&A仲介事業者の情報を集約し比較するようなサイトやクチコミが閲覧できるようなサービスも出てくるかもしれません。この辺もアフィリエイト系のサイトは存在しますが、M&A仲介事業者を特徴や強みで横断検索できるようなサービスは見当たらないので、許認可制への移行とあいまって、利用者から求められていくように思います。
あとは「ABABA」のように最終面接に進んだ過程を評価するようなサービス、たとえば独占交渉フェーズまで進んだ企業をマッチングするようなサービスとか出てきても面白いかも、と思いました。
大雑把な分析ではありますが、こんな感じで類似性のある2つの市場を並べてみると、新規事業のアイデアが出てくることがあるので、おすすめです。みなさんの注目しているマーケットやサービスがあれば、ぜひ教えてください。新規事業に関する壁打ちも、お待ちしてます!