改めて、副業のすすめ

副業人材のマッチングサービスを提供しているtalentalの代表である私が書くことですから、所詮ポジショントークの域を出ないのですが、副業をやっていないことがビジネスパーソンのキャリアにおいて、大きなリスクになることを感じています。

「副業元年」といわれる2018年から丸6年がたち、副業はもう一部の人のものではなく、一般化といえるフェーズに来たと考えています。

特定の1社にキャリアを依存するリスク

個人を会社と同じように考えたとき、1社のクライアントに売上を依存する会社が危ういように、1社に自身のキャリアの生殺与奪を握られている状態というのは、自分主導でキャリア選択を行うことが難しいと感じています。AIによる全産業の地殻変動、社会保険料の引き上げによる企業負担の増加など、さまざまな環境変化が予見される中で、企業に安定雇用や定期昇給を求めるのは、もはや無理がある時代に突入しています。「役職定年」などの制度も、自分と同世代あるいは少し先輩の方々にとっては現実味のある話題となっており、「会社が守ってくれる」というのはとっくに昔話となりました。

副業は、本業の収入補填だけではない

数年前であれば、副業というのはあくまで本業の給与補填という色も強くありましたが、それはあくまで本業が給与アップとまではいかなくても維持される前提による考え方かと思います。今起きている変化、あるいはこれから起きる変化は、そういうレベルのものではなく、土台ごとひっくり返る可能性があるものです。

小さくとも、自分の力で売上を作る経験としての副業

そういう時代にあって、たとえ小さくても自分の名前やスキルで仕事を勝ち取り、価値提供を行うことで売上(収入)を生み出す経験があるかどうか、今後の環境変化に適応できる収入やキャリアのポートフォリオを作っておけるかどうか、これらが自分主導のキャリアを勝ち取るためには不可欠であり、副業というアクションはそのきっかけとなります。

もちろん、起業やフリーランスという選択肢もありますが、正社員からいきなりこの選択をするにはリスクを感じる方も多いでしょう。今は副業を認める会社も増えてきているので、収入の安定性や生活変化にリスクを感じる方は、まず副業から入るのが最適だと思います。また、NISAやインデックスファンド・個別株など投資・資産運用にトライするのも非常に良いとは思いますが、これらはどうしても外部環境に依存する面が大きく、それだけでは不十分と感じますので、やはり実業としてお金を稼ぐ経験が必要になってくると思います。

副業を通して、本業の関係も良化する可能性がある

副業でいつもとは違う環境でお金を稼ぐことが、本業との関係に良い影響を及ぼすこともあるでしょう。副業の経験を通してお金を稼ぐことの大変さを肌身で感じることは、本業の会社がご自身へ毎月決まった金額を払い続けることやそれを可能にするビジネスモデルや組織に対する感謝につながるかもしれません。何より、収入やキャリアのポートフォリオを持っておくことは、本業の会社との雇用契約もよりフェアな等価交換として認識できるようになる気がします。

外を通して、自分の価値を再認識できる

また、本業で経験してきた実務スキルや「あたりまえ」の基準が、別の業界や地域では非常に希少なものとして重宝されることも多くあります。こうした外の世界の経験を通して、自分自身の価値を再認識することができるのも、副業のメリットではないかと思います。

副業してから転職、が普通に

アルバイトや新卒採用の世界では、タイミーで1日働いてから採用するという流れが徐々に広がっています。中途・正社員の領域でも、まずは副業で参画してから正式に入社するという流れが徐々に広がっていくでしょう。お互いの持つスキルやアセット、価値観を共有してから働くという流れは、双方にとって非常にリーズナブルなマッチングであり、一般化した後ではむしろなぜこれまでそうなっていなかったと思うに違いない。talentalという事業が実現したいのはそういう世界です。

転職だけでなく、M&Aや事業承継にも

すでにtalentalを通して数名のタレントが稼働開始していますが、中にはご自身の法人をお持ちの方も多く、そうした現役経営者が別会社のプロジェクトを副業的に支援するケースも出てきています。これが広がっていけば、M&Aや事業承継においても、マッチングプロセスにお試し期間のような概念が広がってくるでしょう。個人の転職活動だけにとどまらない可能性があると考えています。

従来の副業の概念をさらに拡張し、個人のキャリア形成にとって不可欠なものとできるよう、当社としても引き続きこのtalental事業をより多くの企業、多くの個人に活用いただけるサービスに進化させていくべく、取り組んでいきたいと思います。

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