GUIDE
外部人材と業務委託契約を結ぶときの注意点
フリーランス法・労働者性・著作権
公開日 更新日 発注担当者向け
副業人材やフリーランスのプロ人材に、業務委託で仕事を依頼する。そのとき発注する企業が押さえておくべきことは、契約書の書き方だけではありません。2024年に施行されたフリーランス法で自社にかかる義務、雇用と判断されないための関わり方、成果物の権利まで、発注者の立場で整理します。
調査時点:2026年9月14日/法令に関する記述は公正取引委員会・厚生労働省などの公式資料と条文にもとづきます。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の契約についての法的助言ではありません。
この記事の結論
- 相手が従業員を使用しない個人や一人法人なら、フリーランス法の対象です。取引条件の明示は、すべての発注事業者の義務で、従業員を使用する企業には支払期日や中途解除の予告などの義務が加わります。
- 契約の名前が業務委託でも、社員と同じように指示・拘束している実態があれば、雇用と判断される可能性があります。依頼は目的と成果で伝え、進め方は相手に委ねます。
- 成果物の著作権は、報酬を払っても自動的には移りません。譲渡の範囲と著作者人格権の扱いを契約で定めます。
業務委託契約の種類を選ぶ
「業務委託契約」は法律上の名前ではなく、実務では主に請負と準委任を指します。何に対して報酬を払うのかが違うため、依頼する業務に合う型を選びます。
| 契約の型 | 報酬の対象 | 向いている業務 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 請負 | 仕事の完成(成果物) | Webサイトや資料など、成果物が明確な制作 | 原則として、完成しなければ報酬を請求できない |
| 準委任(履行割合型) | 業務の遂行 | 助言・調査・事業推進など、成果物を定義しにくい業務 | 成果そのものは保証されない。業務の範囲と稼働の目安を具体的に書く |
| 準委任(成果完成型) | 業務によって得られる成果 | 調査レポートの納品など、成果を定義できる業務 | 何をもって成果とするかを契約で具体的に書く |
事業開発の支援のように成果物を定義しにくい業務は、準委任で契約することが多くなります。その場合も、業務の範囲・稼働の目安・報告の方法を具体的に書いておくと、期待のずれを防げます。
自社にかかる義務を確認する:フリーランス法
2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注する側に義務を課す法律です。
対象になる相手
業務委託の相手方のうち、従業員を使用しない個人と、代表者以外に役員がおらず従業員を使用しない法人が対象(特定受託事業者)です。公正取引委員会のQ&Aでは、副業として業務を受ける会社員も、その業務委託の範囲では対象になり得るとされています。なお、実態が雇用(労働者)と判断される場合は、この法律ではなく労働基準法などが適用されます。
発注する側と期間で、かかる義務が変わる
取引条件の明示だけは、すべての発注事業者にかかります。それ以外の義務は、従業員を使用する発注事業者(特定業務委託事業者)にかかり、一部は委託期間が1か月以上・6か月以上の場合に適用されます。
| 義務 | 対象の発注事業者 | 委託期間 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 取引条件の明示 | すべての発注事業者 | 期間を問わない | 業務の内容・報酬の額・支払期日などを、書面またはメールなどの電磁的方法で明示する(第3条) |
| 報酬の支払期日 | 従業員を使用する発注事業者 | 期間を問わない | 成果物の受領(役務の提供)から60日以内に支払期日を定め、支払う。再委託の場合は、発注元から支払いを受ける期日から30日以内(第4条) |
| 禁止行為 | 従業員を使用する発注事業者 | 1か月以上 | 受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用の強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しの7類型(第5条) |
| 募集情報の的確な表示 | 従業員を使用する発注事業者 | 期間を問わない | 広告などで募集するときは、虚偽の表示をせず、正確かつ最新の内容に保つ(第12条) |
| ハラスメント対策 | 従業員を使用する発注事業者 | 期間を問わない | 相談に対応するための体制を整えるなどの措置を講じる(第14条) |
| 育児・介護などへの配慮 | 従業員を使用する発注事業者 | 6か月以上 | 申出に応じて、育児・介護などと両立して業務を行えるよう必要な配慮をする(第13条) |
| 中途解除などの事前予告 | 従業員を使用する発注事業者 | 6か月以上 | 契約を中途解除する場合や更新しない場合は、原則として30日前までに予告する。請求があれば理由を開示する(第16条) |
※「従業員を使用する発注事業者」には、法人で役員が2人以上いる場合も含みます。「従業員」には、短時間・短期間など一時的に雇用される人は含みません。命令違反などには50万円以下の罰金が定められています。出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法の概要」
取適法(旧下請法)との関係
2026年1月1日から、下請法は取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)として施行されています。取適法は発注する側・受ける側の資本金や従業員数で対象が決まり、フリーランス法とは対象の決め方が違います。両方にあたる取引もあるため、自社の取引がどちらの対象になるかは、公正取引委員会の資料で確認するか、専門家に相談してください。
雇用と判断されないために:労働者性と偽装請負
契約の名前ではなく、実際の働き方で判断されるのが原則です。問題になる場面は、相手との関係によって2つに分かれます。
個人に直接委託している場合
労働者性
働き方の実態によって、相手が労働者(雇用)と判断されるかどうかが問題になります。
事業者を介して人に入ってもらう場合
偽装請負
発注者が相手方の従業員に直接指揮命令していると、労働者派遣とみなされる可能性があります(厚生労働省の37号告示)。
労働者性を判断するときの主な要素
国のガイドラインでは、次のような要素を総合して判断するとされています。1つの要素だけで決まるものではありません。
| 判断の要素 | 雇用と判断される方向に働く例 | 業務委託として整理しやすい例 |
|---|---|---|
| 仕事の依頼を断れるか | 依頼を断る自由がない | 個別の依頼を受けるかどうかを相手が判断できる |
| 業務の進め方の指揮監督 | 進め方や手順を社員と同じように細かく指示する | 目的と成果を合意し、進め方は相手に委ねる |
| 時間・場所の拘束 | 勤務時間や出社を指定し、管理する | 稼働の目安や打ち合わせの日程を合意し、それ以外は任せる |
| 代わりの人でもよいか | 本人以外が行うことを認めない | 補助者の利用などを認めている |
| 報酬の性格 | 時間単位で計算し、欠勤すると減額する | 業務や成果の単位で報酬を決めている |
※ このほか、報酬の額が著しく高いなど事業者としての性格や、特定の発注者への専属性も判断を補強する要素とされています。労働者性の判断基準は、厚生労働省で見直しの検討が進められています(2026年9月14日時点)。
会議やチャットに参加してもらうときの考え方
社内の会議やチャット、プロジェクト管理ツールに参加してもらうこと自体が、直ちに問題になるわけではありません。見られるのは、そこで社員と同じように指示・拘束しているかという実態です。会議やチャットでは、目的や成果のすり合わせと情報共有にとどめ、作業の進め方は相手に委ねる運用にします。
成果物の著作権を契約で定める
資料・レポート・デザインなどの成果物の著作権は、原則として作った人に発生します(著作権法2条)。報酬を支払っただけでは自社に移らないため、契約で次の3点を定めます。
- 1
著作権を譲渡する範囲
どの成果物の著作権を、いつ(報酬の支払い時など)自社に移すのかを定めます。
- 2
翻案権など(27条・28条の権利)も含めることを明記する
成果物を改変・加工して使う権利は、譲渡の対象として契約に明記しないと、譲渡した側に残ると推定されます(著作権法61条2項)。
- 3
著作者人格権を行使しない旨を定める
著作者人格権は譲渡できません(著作権法59条)。自社で自由に改変・公表したい場合は、行使しない旨を契約で定めるのが一般的です。
秘密保持・競業避止は必要な範囲で
新規事業の情報を扱う以上、秘密保持の取り決めは欠かせません。一方で、国のガイドラインでは、秘密保持や競業避止を業務に合理的に必要な範囲を超えて一方的に課すことは、発注者の立場によっては独占禁止法上の優越的地位の濫用として問題になり得るとされています。
外部人材は複数の企業と取引していることが多いため、「何を秘密情報とするか」「どの業務・期間の競業を避けてほしいか」を具体的に決め、必要な範囲にとどめます。
契約前・契約中・終了時のチェックリスト
契約前
- 依頼する業務に合う契約の型(請負・準委任)を選んでいる
- 相手が従業員を使用しない個人・一人法人か(フリーランス法の対象か)を確認している
- 業務の内容・報酬の額・支払期日などの取引条件を、書面またはメールで明示する準備ができている
- 成果物の著作権の帰属と、著作者人格権の扱いを契約書に書いている
- 秘密保持・競業避止の範囲が、業務に必要な範囲にとどまっている
契約中
- 勤務時間や場所を指定・管理していない
- 進め方を社員と同じように細かく指示していない(依頼は目的と成果で伝えている)
- 当初の取引条件にない業務を、報酬を変えずに追加していない
- 支払期日(受領から60日以内)を守って報酬を支払っている
終了時
- 6か月以上の契約を中途解除・更新しない場合、30日前までに予告している
- 成果物・資料の引き渡しと、アクセス権限の削除を行っている
- 秘密保持など、契約終了後も続く義務を相手と確認している
talentalに相談する場合
talentalは、事業開発(BizDev)領域の実務経験者に業務委託で入ってもらうサービスです。料金・稼働条件・契約の切り替え条件をあらかじめ公開しており、契約の進め方もご相談いただけます。
料金
月50,000円〜
希望時給×稼働時間×管理費。初期費用はかかりません。
稼働
月1時間〜
最低契約期間は3カ月〜。
契約の切り替え
業務委託(直接契約)へ
一律120万円
雇用契約へ
理論年収の40%
よくある質問
副業で業務を受ける会社員も、フリーランス法の対象になりますか?
なり得ます。公正取引委員会のQ&Aでは、会社員が副業として事業者から業務委託を受ける場合も、その業務委託の範囲では特定受託事業者に該当し得るとされています。相手が副業人材であっても、取引条件の明示などの義務を前提に契約してください。
業務委託の人を、社内の会議やSlackに参加させてもいいですか?
参加させること自体が直ちに問題になるわけではありません。判断されるのは、そこで社員と同じように業務の進め方を指示したり、時間を拘束したりしているかという実態です。会議やチャットでは、目的や成果のすり合わせ、情報共有にとどめ、進め方は相手に委ねる運用にしてください。
業務委託の報酬を時給で支払ってもいいですか?
時間単位の報酬であることだけで、直ちに雇用と判断されるわけではありません。ただし、国のガイドラインでは、報酬が時間単位で計算されていることは、ほかの要素とあわせて労働者性を補強する要素として挙げられています。勤務時間の指定や細かな指揮監督と組み合わさらないよう注意してください。
自社に従業員がいない場合、フリーランス法の義務はかかりませんか?
かかる義務があります。取引条件の明示(業務の内容・報酬の額・支払期日などを書面またはメールで示すこと)は、従業員の有無にかかわらず、フリーランスに業務委託するすべての発注事業者の義務です。報酬の支払期日の設定や禁止行為、中途解除の予告などは、従業員を使用する発注事業者に適用されます。
報酬を支払えば、成果物の著作権は自動的に自社のものになりますか?
なりません。著作権は、原則として著作物を創作した人に発生します。自社に帰属させたい場合は、契約で著作権の譲渡を定める必要があります。翻案権など(著作権法27条・28条の権利)は、譲渡の対象として契約に明記しないと譲渡した側に残ると推定されます。また、著作者人格権は譲渡できないため、行使しない旨を契約で定めるのが一般的です。
契約期間の満了で更新しない場合も、予告は必要ですか?
従業員を使用する発注事業者が、フリーランスとの6か月以上の業務委託を更新しない場合は、原則として30日前までの予告が必要です。中途解除だけでなく、更新しない場合も含まれます。予告の後に相手から請求があれば、理由を開示する必要があります。
出典・調査時点
本記事の法令に関する記述は、2026年9月14日時点の公正取引委員会・厚生労働省などの公式資料と条文にもとづきます。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の契約についての法的助言ではありません。個別の契約が法令に適合するかどうかは、弁護士などの専門家にご確認ください。
EDITOR
この記事の編集
黄 千尋こう ちひろ
talental ディレクター
2015年よりフリーランスのライター・編集ディレクター・広報として活動し、2024年9月にtalentalへ参画。タレントのサポートを担当しながら、外部人材の活用に関するガイドの編集を担当している。
